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2019.05.08 ブルーノ・マンサー基金:191,000人がムールアブラヤシ農園に「No」

サラワクの活動家たちがブリュッセルのマレーシア大使館に請願を提出

 (ブリュッセル、ベルギー)サラワクからの先住民族活動家が、ブリュッセルのマレーシア大使館にグヌン・ムル地域の熱帯雨林破壊に反対する191,000の署名を提出した。請願書は、マレーシア、ドイツ、スイスを含め、世界中の多くの国々によって署名されている。活動家の一行は前夜に、イギリス、ベルギー、フランス、スイスへのヨーロッパのロビーツアーの一環としてブリュッセルに到着したものである。ムル地域のKampung Melinau出身のBerawanの活動家であるWillie Kajan氏は、「ムル農園を中止し、土地をダヤックの人々に返還すべき。」と述べている。その後、活動家らはEU職員とNGOに会い、サラワク州政府が2023年までにさらに60万ヘクタールの熱帯雨林とコミュニティの土地をアブラヤシ農園に転換する計画であること等について会合を持つとされている。

2019.2.14 The Borneo Project:サラワク唯一の世界遺産がアブラヤシ農園に脅かされている

マレーシアのサラワク州でユネスコ世界遺産に登録されているムル国立公園の周辺の熱帯林が、アブラヤシ農園開発に脅かされている。マレーシア企業ラディアント・ラグーン社は、近隣の先住民族コミュニティの意に反してこの地域の林を伐採し、4400ヘクタールのアブラヤシ農園開発を始めており、ムル国立公園とブルネイの森林とをつなぐ野生生物の回廊に悪影響を及ぼしている。スイスのNGOブルーノ・マンサー基金は、マレーシア政府とサラワク州政府に、この伐採活動を直ちに中止するよう要請している。「マレーシアは、アブラヤシ農園のための新たな森林伐採を阻止することを国際社会に約束した」と事務局長のルーカス・ストラウマンは述べました。「明らかに環境的な大惨事であり、マレーシア当局とパーム油産業の信頼性が脅かされている。」
https://borneoproject.org/updates/sarawaks-only-unesco-world-heritage-site-threatened-by-oil-palm-plantations

熱帯林がなぜ問題か

 熱帯林は、大気の循環の調整、温暖化の防止、保水、土壌の流出の防止、薬品の原料の提供等、様々な恩恵を人類に与え、先住民族族の生活を支える役割も担っています。生物多様性の宝庫である熱帯林には地球上の生物種の半数以上が生息しています。

 2017年だけで、158,000平方キロ(日本の面積の約40%)の熱帯林が失われました。これは2001年以降で2番目に高い森林消失率です。熱帯林減少は、上に述べたような熱帯林の様々な機能を停止させてしまうのみでなく、森林に蓄積された炭素をCO2として放出し、さらに今後の炭素の吸収源を減少させるものでもあり温暖化を促進します。現在、熱帯林の破壊と劣化は、世界の温室効果ガス排出量の20%程度を占めるとされています。

Ⓒ峠隆一(非営利目的であっても、無断のコピー・転用を固くお断りします)

Ⓒ峠隆一(非営利目的であっても、無断のコピー・転用を固くお断りします)

 熱帯林減少の要因としては、森林以外の用途(農地、放牧地など)への転用、不適切な商業伐採、過度の焼畑耕作、薪炭材の過剰採取等が挙げられますが、日本と関わりの深い東南アジアにおいてはその主要原因は1970年以降長期にわたって商業伐採でしたが、今はプランテーションへの転換も大きな要因になっています。かつても今も伐採された熱帯材の最大の輸入国は日本です。

サラワクの概況

 サラワク州はマレーシアにある13の州のひとつで、世界で3番目に大きい島であるボルネオ島に位置しています。人口は、以下のように最も多いのが先住民族であるイバン人、次いでマレー人、中国人となっています。

 ボルネオ島が世界の土地に占める割合は1%ですが、生物多様性に富むため世界の動植物の約6%を占めておりこれは豊かな熱帯林によるものです。しかし、30年以上にわたる熱帯林の伐採のために現在サラワクに残されている手付かずの自然林は、当初あったうちの5%程度といわれるまで減少しており、生物多様性も脅威にさらされています。

 サラワクの木材産業は長年にわたり、汚職と結びついて環境破壊と先住民族からの土地収奪を続けてきました。

人種 人数
イバン人
745,400
マレー人
599,600
中国人
596,100
ビダユ人
205,900
オラン・ウル
164,700
メラナウ人
132,600
インド人
7,800
その他
8,200
合計
2,460,300

出所:ボルネオ・ポスト・オンラインFebruary 8, 2014
注:イバン人、ビダユ人、メラナウ人、オラン・ウルは先住民族。オラン・ウルはカヤン、ケニャ、カダヤン、ムルなど16の少数民族の総称。

サラワク・キャンペーン委員会(SCC)

 マレーシアのサラワク州では1980年代後半から熱帯林の商業伐採が進行し1990年代には年間40万ヘクタールもの森林が商業伐採によって破壊されていました。先住民族族は森林から動物や果実を、川から飲み水や魚を得て生活していましたが、伐採によりそれらができなくなり生活困難に追い込まれ、様々な手段で抵抗しましたが事態は悪化の一途でした。当時サラワク州産出の木材の約半分は日本へ運ばれ建設等で大量に使われており、この異常といえる状況を日本の人々に伝え解決策を探る活動が必要と考えた有志により、1990年にサラワク・キャンペーン委員会(SCC)は設立されました。

 SCCは、サラワクで起きている問題を日本に伝えること、サラワクの熱帯林を保護し先住民族族の人権を守るための活動をすることを目的としています。

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